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□ 車両盗難事件ファイル □
番外編-4 〜 02/04/04 読売新聞朝刊より
何気なく開いた朝刊の3面記事に最近の盗難事情が掲載されていました。出社前のあわただしい中、全部読み終わるまで家を出ることが出来ませんでした。
まだお読みになっていない方、ぜひご一読ください。
◇組織犯罪の侵食
◆「取引盛んなドバイ経由」輸出時、甘いチェック
大きな三角屋根の鉄骨倉庫は、ロンドンの静かな住宅街の外れにあった。周囲を高い金網で囲まれ、入り口には制服の警察官が立っている。中に入ると、トヨタ製の四輪駆動車「ランドクルーザー」が何十台も並んでいた。
「みんな警察が押収した日本の盗難車だ。野ざらしの車もたくさんある」。昨年九月、ここを訪ねた福井の旅行代理店勤務の男性(49)は、倉庫の管理人から説明された。
倉庫の中の一台は、この男性の親類が一九九九年十月に大阪府内で盗まれたものだった。それが分かったのは翌年の十一月。ロンドン警視庁が、不審な輸入業者から日本の盗難車三十六台を押収したところ、一台の車体番号が一致した。
輸入業者は供述した。「アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにある商社から買った」。大阪―ドバイ―ロンドンという盗難車の不正輸出ルートが浮上し、ロンドン警視庁は間もなく、ドバイの商社と取引していた大阪の貿易会社を突き止める。「バミヤン国際貿易」。ドバイの商社から同社には、十億円もの資金が流れていた。
府庁や合同庁舎が集まる大阪市中央区の谷町筋。バミヤン国際貿易は、大通りに面したガラス張りのビル七階にあった。
大阪府警も九九年秋ごろから、同社の内偵を始めていた。端緒はその年の六月末、大阪港でドバイ向けの積み荷から盗難車二十三台が見つかった事件だった。奈良の「佐藤商会」が輸出したことになっている。だが、この会社は実在せず、連絡先の携帯電話も、盗まれた健康保険証を使って契約されていた。
府警が捜査本部を設けた直後、別の窃盗事件で逮捕した容疑者がこんな供述をした。「大阪港の事件には『ジミー』という中東系の男が絡んでいる」
ジミーの正体はすぐに割れた。アフガニスタン人のグラム・ラザ被告(28)。バミヤン国際貿易の代表取締役だった。
日本語が堪能なラザ被告は弟のモハッド・イサ被告(24)とともに、関西の自動車盗常習者に「ランドクルーザーを盗めば一台三十万円」と持ちかけ、少なくとも三百四十台(十二億円相当)をUAEやオーストラリアなど八か国に輸出していた。
府警が、ラザ、イサ両被告の逮捕に踏み切ったのは昨年一月。だが両被告は黙秘を貫き、事件の黒幕とみられた両被告の兄(37)の関与や、ドバイから送金された十億円の行方は解明できなかった。
同様の事件は各地で起きている。神奈川県警が一昨年摘発した窃盗団は、首都圏で盗んだ八百七十八台の大半を富山港に運び、パキスタン人らの手でドバイなどに輸出。兵庫県警が昨年摘発した窃盗団は、道で見かけたランドクルーザーのナンバーから陸運支局で所有者を割り出し、七百五十台を盗んだが、輸出先の中心はやはりドバイだった。
九八年から毎年30%近く増え続け、昨年は六万三千件を数えた自動車盗難。被害車両が持ち主に戻る還付率が40%にとどまっているのは、大半が海外に不正輸出されているためだ。
そして、日本と同じ右ハンドルが主流の英国や旧英連邦の国々に運び出されている。
国際刑事警察機構(ICPO)のデータがそれを裏付ける。日本の盗難車のうち、この二年間に英国で見つかったのは計千百三台。世界三十五か国で見つかった千七百五十七台の63%を占めた。英国と中古車取引の盛んなドバイは、その中継点にすぎない。
昨年、英国で日本の盗難車の流通実態を調査した日本損害保険協会の担当者は指摘する。「英国では、中古でも価格は新車と変わらない。船賃をかけても大きな利益が出るため、海外の仲介業者にとってもうまみが大きい」
実はバミヤン国際貿易の事件では、佐藤商会のほか「サクセス」「関西貿易」といった実在しない会社の名前で輸出手続きが行われていた。手続きを代行する通関業者はこうした会社の実態を調査もせず、税関も申請書類を形式的に確認しただけだった。
「日本の税関審査は輸入に厳しい分、輸出には力を割いてこなかった。こうした輸出時のチェックの甘さが、急増する自動車盗の要因の一つと言われても仕方がない」。東京税関の幹部はそう語った。
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